2020夏季県高校野球大会が行われ、球磨人吉地区の3校が活躍。7月上旬の熊本豪雨被災地に大きな勇気と感動を届けた。コロナウイルスで、全国の高校球児が甲子園という夢を失った今夏。「特別な夏」として始まった代替大会の矢先に県南豪雨災害。被災した部員も数多くいたなかでの開幕。活動自粛後には、連日被災地でのボランティア活動に精を出した。野球ができることが当たり前でなくなった球児たち。大きな逆境を与えられたにも係わらずその雄姿はたくましく、笑顔で前を向く姿勢は多くの人々に勇気と感動を与えた。南稜・人吉・球磨工の、届けた「元気」・敗けても「晴れやか」・貫いた「最後まで全力」は、復興に向けたエールを球児たち自らプレーで示してくれた。
「応援で得た力 高校で恩返しを」
第25回全国都道府県対抗男子駅伝大会が1月に、広島市平和記念公園発着で行われ、湯前中3年の落合諒さんが2区を激走。熊本は2時間18分44秒で7位となり、8年ぶりの入賞を果たした。実業団選手を招集せず大学生以下の若い世代で挑んだ熊本県。高校生を中心に若い力でチームに勢いをつけた。中学生区間の2区で出場した落合さんも3000M自己記録となる8分49秒をマークした。中学入学後から本格的に競技をはじめ早い段階で頭角をあらわす。1年時には県通信陸上大会で1500M優勝。2年時にも中学選手権で優勝。ジュニアオリンピックでは全国大会出場(台風の為中止)など多くの好成績をおさめ、注目を集める。安定した走りが特徴で大崩れしない。駅伝選手としても「計算できる選手」「個人競技だがチーム戦でより力を発揮できる」と関係者も太鼓判をおす。今春から熊本市内の駅伝強豪校に進学予定。本人の目標である高校駅伝日本一を掲げ、自主トレーニングにも余念がない。新型肺炎の影響で練習環境にも変化を余儀なくされる昨今。そんななかでも自主トレ中、「町民の方々に頑張れよなどたくさん声を掛けていただいて励みになる」「しっかり頑張らないと」とかみしめた。「高校3年間で必ず日本一になってお世話になった人や町民の方々に恩返ししたい」と強い決意を口にした。都大路での晴れ舞台を期待し、高校での更なる活躍を見守りたい。
『全てにおいてレベルアップを 4年後に照準』
全国23大学、総勢男女363名が出場した第55回全日本学生カヌースプリント選手権大会で湯前中出身の竹崎 杏さん(武庫川女子大1年)が、カナディアン女子一人乗り(200M)・(500M)で優勝。二人乗り(500M)も優勝し3部門制覇の快挙を達成し、注目を集めている。湯前中時代まで柔道で鍛えた体幹の強さを活かし、全国の強豪球磨工業高校で本格的に競技を始める。男子部員中心のカヌー部において男女の体力差などを強い精神力でカバー。高校2年時には全国優勝も経験。153cmと小柄ながら巧なパドリングと、ハイピッチなストロークで他を圧倒。インカレ8連覇中の名門武庫川女子大においても、1年生ながら大きな期待を寄せられている。来春行われる最終選考で、東京オリンピック出場を目指すが、本人は次のパリ大会に照準を合わせ日々、トレーニングに励んでいる。「まだまだ世界と戦うには力不足。全てにおいてレベルを上げないと」と4年後を見据える。彼女の強さの秘密に関係者は、「とにかく真面目で努力家」「コツコツ課題をクリアしていくタイプ」と話し、来年以降大学としても後輩達の良き見本となる存在にも期待されている。現在国内では目下敵無しと同世代では群を抜いている。着実に成長し4年後の進化した彼女の勇姿に期待し、大学での今後の活躍を見守りたい。
=全日本軟式野球連盟審判指導員=
「選手が主役 脇役に徹し見守る」
球磨郡軟式野球連盟審判部所属で、全日本軟式野球連盟審判指導員の資格を持つ池田さん。学童、中学、社会人など年間約80試合をこなす傍ら、審判指導員として県内各支部をまわり講師も務める。自身「根っからの野球好き」で多良木中から鹿児島実業へ進学。3年時春にはセンバツ大会にも出場。2002年に、野球好きが高じて審判員を志し、球磨郡軟式野球連盟審判員となり、2016年には県内に3人目となる全日本軟式野球連盟審判指導員を取得し現在に至る。年々野球人口が減っている昨今を裏方として目の当たりにしてきた池田さんは、少しの寂しさを口にし、「野球人口を増やしていけたら」と話し「小さい子供達にもスポーツの楽しさ、野球の素晴らしさを審判員の立場ではあるが伝えていきたい」と語った。普段さまざまなレベルの試合を裁いてきたが、「特に学童の試合には細心の注意をはらって臨む」と池田さん。中学生や大学生と違って予測できないプレーがおこりジャッジを誤る恐れがあると言う。それでも学童の試合は裁いていて楽しく、一生懸命に白球を追いかける姿に感動すらおぼえ、「この子達の今後の野球人生を左右すると思えば気が抜けない」と話した。
現在、全国各地で審判員も減少し新しい担い手も不足している実状、審判部の組織自体も今後大きな変革が検討され始めている。「審判力向上だけでなく、競技普及活動や担い手の確保と課題は山積み」と話した。今後も「末永く野球に携わっていきたい」と話し、「選手あっての審判。決して目立ってはいけない存在」と真剣な表情に、ある意味裏方として選手を支える『職人』の顔が垣間見えた。
「役割の意味を理解し自身の地位を築く」
湯前町出身の藤本王将さん(東亜大学卒)が、今春より社会人野球強豪の熊本ゴールデンラークスへの入団が決まった。人吉高校野球部時代より速球派投手として活躍。東亜大学では中国地区リーグ最優秀防御率賞を獲得するなど実績十分。投手としては小柄な体格だが、最速145kmのストレートと、多彩な変化球を操り打者を翻弄する。フィジカルも強く社会人でも十分やっていけるとし、熊本ゴールデンラークスが獲得に名乗りを上げた。入団会見も済まし、現在はオープン戦で早々に結果を出している藤本さん。「まだまだ通用するレベルまで来ていない。速いだけの投手ならいくらでも居る」と話し。バットの芯を微妙に外すストレート(ワンシーム)を更に磨き「精度を上げていきたい」と課題を口にした。オープン戦では中継ぎ投手として短いイニングを任せられている現在。将来的には主戦として先発を期待される選手だが、「中継ぎでしっかり結果を出し、まずはチームの先輩方に信頼されるピッチングをしていかないと生き残れない」と今の役割の意味を十分理解している。少し気は早いが、社会人野球の祭典「都市対抗野球大会」で活躍する日もそう遠くない気がする。ノンプロの厳しい世界ではあるが、期待を込めて今後に注目していきたい。
あさぎり町を拠点に活動する総合格闘技ジム・福永道場(福永裕一郎代表:多良木町)所属選手が世界を舞台に活躍している。国内や海外のプロ総合格闘家やキックボクサーが激闘を繰り広げる、九州最大級格闘技イベントLEGION☆JAPANは、福永道場が主催している。その選手の中でも、今最も注目されてる選手が、総合格闘家のANIMAL☆KOJI選手。ANIMAL☆KOJI選手は、福永会長と二人で設立したLEGION TOP TEAM(福永道場)の看板選手。ANIMAL選手は海外での評価が高く、福永会長は『ANIMALは世界を取れる選手なので、常に世界の強豪選手が集まるアメリカのカリフォルニアにあるジムに寝泊まりさせて、練習をやらせてます』と語る。その環境が実を結びANIMAL選手は、世界の格闘技イベントのトップブランドである、某格闘技大会から先月オファーを受け、契約を交わす事となった。『世界最強の男になって、福永会長に恩返しをする事』とANIMAL選手は語る。福永会長は、『ANIMALのように世界で活躍できる選手を今後も、道場で育成したいですね』と語った。なお福永道場では、今現在6歳~49歳までの男女が練習やフィットネスに汗を流していて、寺田新一郎会長代行(あさぎり町)・唐鎌大志副長(多良木町)も指導には定評があり、子供達や一般の選手達からも人気が高い。
【お問い合わせ】総合格闘技『福永道場』
あさぎり町免田東1809-1
TEL:0966-45-9970 代表:福永裕一郎
《練習内容》総合格闘技、キックボクシング、フィットネス
《練習日》月曜~金曜日
アマチュアとジュニアは週二回、プロは何回でもOK
『勝利にこだわり一致団結』
熊本千原台高校2年 栗原 泉さん(湯前町)
10月28日に行われた県高校駅伝競走大会で、5年ぶり17度目の優勝を飾った女子の千原台高校。12月に行われる全国高校駅伝大会「都大路」に出場する。県大会のアンカーで出走し優勝のゴールテープを切った栗原 泉さん(湯前町)に地元も大きな期待を寄せる。大本命不在と言われた県大会は混戦が予想されたが、千原台が序盤からレースを支配し終盤にギアを一気に上げ、2位に1分近いタイム差をつけ昨年4位の雪辱を果たした。栗原さんも5区(5キロ)を17分6秒と2位に20秒差をつけ見事区間賞を獲得。昨年を悔しさを味わった5人の再挑戦の舞台は眩しくも輝かしい結果となった。「勝ちたい」と全員が一致団結。気持ちの強さ(メンタル)の重要性を示した千原台。全国の舞台での活躍が期待される。
昨今のスポーツ現場における取り巻く環境が大きく変わり始めている。体罰・パワハラ・暴力(言葉を含む)等、連日何かしらメディアで耳にする。その中でよく聞く「選手ファースト(アスリートファースト)」に注目してみた。選手の為をと一番に考えて取り組む。大変すばらしい考えだ。しかしどうだろう、あまりにも過剰に周りが反応しすぎではないだろうか?選手と指導者の間に信頼関係があってこそ競技技術が向上する。その信頼関係の中には、当然厳しさ等も含まれると考える。そこが行き過ぎると判断されれば、第3者の目が反応する。このパワーバランスの乱れが、現代のスポーツ環境を大きく変えようとしていると強く感じる。学生スポーツの指導現場でも、こういったトラブルが多い事も事実だ。決して体罰やパワハラを肯定するつもりはないが、危険と隣り合わせにあるスポーツは「気の抜けた行動を取らせる訳にはいかない」と指導者は考える。どうしてもある程度の厳しさは必要になってくる。昔と今の指導を比べるのは良くないかもしれないが、昔は厳しいのが当たり前で、輪を乱す事を悪しとされ我慢を覚えさせられた。
話は少し変わるが、大地震後の被災者の方達が給水や給配食の際、きちんと行列を守り、略奪行為などがない様子を世界のメディアが称賛したとの報道を目にした。これこそが日本人の良さ、先人たちが教えてきた、我慢強さではないだろうか。我慢の背景には厳しさや辛さがある。それらを乗り越える力が、我慢強さとなる教えのひとつと考えられていたのではないだろうか。
スポーツも色んな意味で転換期にきている今、組織のガバナンスを含め、我々第3者も本当の「選手ファースト」に向けて考えていかなければいけない。スポーツ記事を書く身としても辛い話題が多いスポーツ界。高校野球問題に然り、体操問題に然り、今後より良い方向に進展する事を切に願いたい。